数年前、仕事を辞めて家でテレビを見ていた。
特に目的もなくチャンネルを切り替えていたところ、東大出身の多種多様な職につくゲストを年収毎にピラミッドの階層に席を割り当てて紹介していく番組が目に止まった。
東大生といえばエリート街道まっしぐらといったイメージがあったものの、中には芸人を目指して貧しい暮らしをする人、タクシーの運転手をする人、ラーメン屋を開業している人など必ずしも年収が高いわけではないようだった。
しかし、ある程度ピラミッドの階層が上がると弁護士、医者、テレビ司会者など数千万単位の年収を稼ぐ人間がラインナップしていた。
そのピラミッドの頂点に座っていたのが「金森重樹」なる人物だったのだが、フリーターをしていた際1億近い借金を背負ったものの、そこから事業を起こして借金を完済し富裕層に成り上がったとのことだった。
毎月1千万を積立貯金して、高い服も時計も買わず、危ないから飲みにも行かないと言う。そして、番組の終わりが近づくと「借金がある中で結婚してくれた嫁に頭が上がらない」と号泣していた。ド派手な金持ちの真逆をいく人物でとても印象的だった。
番組中、彼の言葉で特に心に響いたのは「人間が転ぶのは色(異性関係)、金、名誉(見栄?)」というものだったのだが、親類が商売に失敗した話を小さい頃からおとぎ話のように聞かされて育ったので、その要約された3文字は多くの謎を解く鍵となり目から鱗だった。
後日、金森氏は本を出している事を知り購入する。
タイトルは「借金の底なし沼で知ったお金の味 25歳フリーター、借金1億2千万円、利息24%からの生還記」だった。
内容を端的にまとめると、なぜ日本の最高学府である東大を卒業してフリーターになったのか、そしてなぜ1億円の借金を背負ってしまったのか、そしてどうやってそれをリカバーしたのかだった。
本書の中で特に注目したのは、彼が借金を背負ってから同じように債務を抱える人々にインタビューをしてなぜ失敗したのかを研究していた点にあった。
多くの人は「どうやったら成功するのか」を模倣しようと必死に努力するが、「どうして失敗するのか」については全く研究していない。
成功体験は模倣しようとしても模倣できるものではないが、失敗体験については模倣するつもりはなくても勝手に模倣してしまうのはとても不思議だと思っていた。
「色、金、名誉」
おかしくなっていく人間の周りには確かにこれらの影が常にちらついていた。
お金持ちになった今はどう考えているのだろうか。
彼の配信するメールマガジンも購読しているが、「幸せ」についても研究しているようなことが一時期書いてあった。
どん底とてっぺんを経験した人物の考える「幸福論」は一体どのようなものなのだろう。
最近も色々あったようだが、倒れても倒れても立ち上がるその姿勢にはただただ「すごい」と思ってしまうし、何かをしようという気持ちにさせてくれる。
最近の自分の「成功」の定義は「破滅をしないこと」なので、どうやったら達成できるのか試行錯誤している。
今でも「お金の味」は数少ない蔵書として部屋に置いていて、たまに読み返して参考にしている。

借金の底なし沼で知ったお金の味 25歳フリーター、借金1億2千万円、利息24%からの生還記
- 作者: 金森重樹
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2009/02/05
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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