ヨナオシクス

まったり三十代フリーライター(ワープア)が様々なことを調べています。主なソースはWikipediaとYoutubeです。

未来工業と信じる力

岐阜に「未来工業」という名前の電気設備資材を扱うメーカーがある。

 

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特にド派手な製品ではないものの、残業なし、年間休日140日、全員正社員雇用、副業OK、ホウレンソウなしを実現している夢のような会社だと思った。さらに経常利益も10%台と利益もきちんと出ているそうだ。

 

 

その存在を知った当時、こんな世界もあることに衝撃を受けた。

 

 

「うらやましい」と。

 

 

そして、それからというものなぜこれが成立するのか考えていたことがあった。

少し思うところがあったので備忘録代わりにまとめてみようと思う。

 

売上、粗利

 

まず、企業活動を成立させるためには「売上」「粗利」を確保することが大前提となる。当たり前の話だが、これがなければ就業条件以前の話で会社が潰れてしまう。

 

電気設備資材といった本来であれば利益率の低い製品で利益を出すには「差別化」が必要となる。ただ、未来工業の場合はプロダクトアウトではなく、実際にそれを使っているユーザーの声を取り入れた差別化を行っていたようだ。

 

実際に意匠登録件数もソニー東芝といった大企業を抑える数を出願しており、その数字が製品が持つ競争力を裏付けているともいえるのだろう。

 

製品に付加価値をつけた上で生産調整もしっかり行っていたようなので、値崩れによる利益率の下落に対して対策が行われている。

 

あと気になったところは営業所が多いことだろうか。

営業方法もきっと何か工夫をしているのだろう。

ノルマも禁止らしい。

 

下請けの仕事はしなかったのも良かったのだろう。

当たるまでが大変だとは思うが。

 

 

仕入れ、経費

 

原材料の仕入れについては分からなかったが、多分きっと何かしらの工夫をしているのだろう。

 

経費についてもシビアに管理していて、コピー機は本社に1台だけ、電気もこまめに消すといった習慣でコスト意識を高めるおまじないをかけていたようだ。会社の金だと思うと雑に使ってしまいがちになるのは人間あるあるだと思う。

 

改善提案

 

改善提案はメーカーであれば多くの会社にあるものだが、大抵賞をとるような内容でないとお金がもらえない。

 

未来工業の場合はどんな内容でも提出したら必ず「500円」くれるそうで、金がもらえるとなったら進んで案を出すだろう。これが意匠登録件数などその他もろもろの業務改善の源泉になっていたのだろう。

 

実際「ああすればいいのに」と働いて思っていることは結構あるものの、どうせ言っても何の得にもならないと黙っているケースは多くあるものだ。それが案外コストが漏れてる要因になっていたりするので、それを500円で解決できるのだから考えようによったら安いものだと思う。

 

残業、休日、給料、年功序列

 

残業なしと休日多めにはメリットは多いと思う。

 

「人間疲れるとろくなことを考えない」と思っているし、10時を超えたあたりとかはほとんど頭が働いていないのであまり効率がよくない。

 

休みが少なくても同様に心が荒んで、「なぜ生きているのだろう?」と哲学の巨人に変貌するので「離職」という考えが頭をよぎりあまりよくない。

 

逆に暇すぎても同じ考えが浮かんでくるので、人間はわがままな生き物だと思う。

 

それに、工場なんて稼働したら電気代とかも馬鹿にならないだろうし、生産調整できるのであれば稼働日数を減らした方が経費も浮くだろう。

 

給料について思うことは、人は能力差による給料の差異は案外すんなりと受け入れるものだ。

 

むしろ、給料の比較にあたっては社内の人間よりも、自分と同世代の同じバックグラウンドを持っている社外の友人と比べるため、相場よりもちょっと高いくらい給料をもらっていて、休みも多かったら「まあ、こんなものかな」と満足するのである。ほとんどの人間は自分の価値を相対化するから。

 

全員が全員ハイサラリーを追い求めるわけではないし、家族持ちになんかなったらもっとリスクは取りたがらないだろう。優秀な人材だからみなリスクを取りたがるかといえば、実のところそうでもない。むしろ、優秀だからこそ先読みするのでそれが顕著だったりする。

 

年功序列で安定が確保できるのであれば、それで充分ではある。

 

全員正社員雇用

 

未来工業は全員正社員雇用だという。売上350億円で700人くらいと言っていたが、中小企業の規模だからできたというような事についても触れていた。大企業になると色々と法的な制約が大きくなるので逆に難しくなるのかもしれない。

 

企業が正社員雇用を躊躇する理由は、金がかかるのと「なかなか辞めさせることができない」に尽きるだろう。

 

また、業種によっては波があるので人件費を調整できない正社員よりは、派遣や契約社員を活用したいのは分からないでもない。

 

自身の体験を振り返ると派遣や請負の人の方が場馴れしていてハングリーな分、正社員より優秀な人が多かった気がする。ただ、そこには壁があったと思う。

 

正社員でそんなに給料をもらっているわけではないものの、「正社員はいいですね」みたいなことを派遣や請負の人にはよく言われた。まあ、頑張っても給料が上がらなければそうなるのは自然なことだと思う。


働く環境に階層が多すぎると、人間の持つ「嫉妬」や「見下し」などの不必要な感情が発生して意思疎通を阻害して効率が悪くなるという点はあるような気がする。定量的に数字だけ見ていたら気がつかないことでもあるが。

 

間に色々業者が入ることで中間マージンが発生する訳だから、それなら全員正社員で雇えば面接の手間とか省けるしメリットもあるのだと思う。あまり、外注をかませすぎると「不具合」「リコール」「品質低下」のリスクも増えるし。


上手く回らないので平社員は今度は上長の文句を言って、上長は役員の文句を言って、役員は社長の文句を言って、社長は「なんで数字がよくならないんだ」と怒号を飛ばすという負のスパイラルがそこにはあった。もはや、個人がどうのというよりも構造上の問題だと思う。



副業の許可

 

休日が多くて、残業もないときっと「暇になる」。

 

暇になると人間ろくな事を考えない。



「自分はもっとできるんじゃないか?」みたいな。



組織の看板を背負っているから成立しているという事実がすっぽりと頭から抜けて。



同業他社の仕事以外の副業に限って副業を認めれば、そういった考えが改まっていいのではないだろうか。上手くいったらそれはそれでいいだろうし、いかなかったらいかなかったらで自分に足りないものを知るよい機会になるし。



ホウレンソウの禁止

 

大体、どこの企業でも導入されている「報告、連絡、相談」を略した「ホウレンソウ」だが、巨大な企業では必要かもしれないがフットワークが必要とされる企業では非効率だと思う。

 

この概念を提唱した企業が倒産したという話を聞いて、なんだか意味がよく分からなかった。

 

社内で掲げている標語が「常に考える」だそうだが、ホラクラシーやティール組織のような概念の先駆けといってもいいだろう。



経営者像

withnews.jp

 

元々劇団員をしていたそうなので、「人間」をよく見ていたのだと思う。

 

今振り返ると理想主義者というよりかは、どちらかといえば超がつく「現実主義者」だったのだろう。現実を突き詰めていった結果理想社会を構築した好例だと思う。



「えさ」という言葉をよく使っていたようだが、人間が持つ「嫉妬」「怠惰」「不満」といった感情を様々な工夫を通して前に進む原動力に変えていく技は経営というよりも芸術に近いものがある。



例えば、経営者がいい車を経費で落として乗ったりしていたら税金面で得をして金の面では問題がない訳だが、それを傍から見た人間からは頭で分かっていても余計な感情を生むのを分かっていてそういうこともしなかったという。



とはいえ、変な「平等主義者」という訳でもなく、むしろ競争を排除しようとする世の中の方が問題があると言っている。



今なら少しだけ分かるが、この会社の手法だけを真似しても決して同じようにはならなくて、良い部分も悪い部分も含めて人間を「信じる」というコアがないと器だけの空っぽなものになってしまうということだ。



多くの人は思想信条やテクノロジーといった「概念」を世の中を良くしてくれるものとして信じているが、肝心の眼の前にいる人間という「不合理」な生き物を信じていないことに最近気がついた。

 

もし、概念がそれを阻害するのであれば、そういったものは自分からどんどん排除していった方がいいと思っている。

 

もっといえば眼の前に対峙している人間は自分の鏡写しだから、「自分」を信じていない裏返しでもあるのだが。

 

ラーメン屋の行列に並んだだけで薄れてしまう「人間を信じる気持ち」をどうやったら保てるのだろう。

 

頭で分かっていてもすんなりいかないのが、人間らしさだからまあいいかな。

 

大きいことを考える前に一人目の前の「人間を信じるところ」から始めよう。